教科書に載っていない広報(広報コラム)
教科書に載っていない広報
今回はクレーム対応の観点で広報戦略を論じたいと思います。
クレーム対応観点での広報戦略で大事なことは、「お決まりのクレームに慣れるのではなく、クレームそのものを消滅させる」こととなります。
●あるお客様相談室責任者の実力
先般、カスタマー対応のスペシャリストの方とお会いしました。
外資系企業やベンチャー企業、音楽業界の有名な企業で責任者として手腕を発揮された方で、カスタマー対応はティーンからシニアまで幅広い世代の疑問・質問、お褒めの言葉、クレームなど、すべてを経験されています。
クレーム対応についてお話を伺ったところ、その方の経験と手腕・手法は見事なもので、私も30年広報に携わり、多くの企業を見てきた中でも秀逸でした。
●クレーム対応報告の「数字」に意味はあるのか?
多くの企業は日次、週次、月次報告などで問い合わせ件数を報告し、その増減を成果指標にしています。
しかし、新たなサービスをリリースすれば、当然お客様相談室への問い合わせ件数は増えます。
中にはサービスの使い方がわからずクレームになる場合もあります。
これは必要不可欠なクレームです。単に問い合わせやクレーム件数の増減を成果指標にする意味はあるのでしょうか。
私も、以前にカスタマー部門を統括していたことがあるのですが、特にクレーム対応に関しては、件数より、問題の根本を解決するよう取り組んでいましたが、その方はそこからさらに一歩踏み込んでいました。
●お決まりのクレームを「消滅」させる
いつもの同じクレームには回答問答集のように定番の回答が存在し、リスクもそんなに高くありません。
しかしいつまでも同じクレームに対応し続けることこそ無駄ではないかと考えたそうです。
そんなお決まりのクレームを消滅させるための手法を教えていただきました。
①クレームの内容から改めて問題点を確認する
②根本的な問題を発見し見直します。ファクト(事実)やエビデンス(根拠)を見直すことで、解決できるクレームはたくさんあるそうです。
つまり、ファクト(事実)、エビデンス(根拠)を正確に把握した上に基づいた回答を検討することが重要なのです。
ただし、この過程で顧客の立場を尊重することは忘れてはいけません。
ちなみに、再検討した結果、多くの回答は『これまでと全く異なる回答』になるそうです。
まさに“目からうろこ”の回答すぎて、社内も困惑するそうですが・・・。
これがハマると、長年続いている『定番クレーム』をどんどん消したくなるそうです。
今回お聞きした事例のひとつに、自社だけでなく業界全体が抱えるクレームがあり、成功事例を業界団体にも公開。
このクレームは業界からも消滅したそうです。
いつものクレームだからマニュアル通りで対応は楽だと思うのではなく、根本的な解決策を考えるという思考を持つことが大切です。
ひとつでもクレームを解決できれば、対応にかかる時間の無駄もなくなり、結果として生産性が向上します。
広報戦略コンサルタント 田中 康志
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